「CellArray-Heart™」とは

CellArray-Heart™(セラレイ・ハート)は、心筋細胞の配向性培養を可能にするバイオアッセイや再生医療研究用細胞培養デバイスです。

当製品は、心筋細胞等を配向させる表面微細構造をもつ細胞培養基材です。基材の表面には、王子グループ独自のナノドットアレイ技術により微細構造形成技術で形成したナノサイズの突起部と平坦部がストライプ状に配置されており、その微細構造による異なる細胞接着の強度を利用し、細胞の配向性を制御しています。

「CellArray-Heart™」の特徴

CellArray-Heart™で配向培養したヒトiPS細胞由来心筋細胞は、成熟した形態や生理活性を有する事が確認されており、薬剤安全性試験や再生医療研究等に利用できます。

特徴1　播くだけで細胞の配向性を制御

配向性培養により心筋細胞の成熟化が促進、薬剤安全性試験や再生医療研究等に利用できます。

CellArray-Heart™を使用して心筋細胞や筋芽細胞を培養すると、細胞は自身の長軸を基材のストライプに沿う方向で接着し、細胞シートを形成します。生体内の心筋や筋繊維は、細胞が一方向に並んだ（配向した）状態で存在し、機能を発揮しています。CellArray-Heart™を使用する事で、生体内の細胞と同じように細胞が一方向に配向した状態で培養する事が可能です。実際に、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を使用した実験では、配向性培養により心筋細胞の形態的・生理的成熟化が促進されることが示されました。CellArray-Heart™は、これらの効果を活用し、薬剤安全性試験や再生医療研究等の試験にも好適に利用できます。

播種直後、細胞はCellArray-Heart™の基盤上で移動、接着、伸長し、ストライプ方向に沿って配向しています。

特徴2　再生医療研究に応用できるフラットな細胞シート

配向性を持つ心筋細胞シートを基材から取り外し、再生医療研究に利用できます。

基材の表面に温度応答性ポリマーなどの細胞の剥離を可能にする素材をコーティングする事で、配向性を持つ細胞シートを基材から取り外すことが可能です。

※上記はCellArray-Heart™35mmディッシュにUpCell^®加工を施した際の実験例であり、当商品単体では培養細胞の解析が中心になります。細胞剥離ができる商品をご要望の際はUpCell^®加工タイプをご検討ください。

特徴3　ヒトiPS細胞由来心筋細胞を10日間で成熟化

CellArray-Heart™で培養したヒトiPS細胞由来心筋細胞は一方向に配向し、10日維持培養で成熟化が促進されます。

ストライプ方向への配向培養

ヒトiPS細胞由来心筋細胞を7日、14日、44日間培養しました。CellArray-Heart™上のiPS心筋細胞は、培養7日目でストライプ方向への配向性が見られ、配向性は培養44日目まで維持されました。一般的な平面の細胞培養基材上では、培養日数に関わらず、iPS心筋細胞はランダムな方向性で培養されました。 CellArray-Heart™は、使用前にフィブロネクチンコーティング処理を行いましたが、心筋細胞の配向性誘導には影響はありませんでした。

同一方向に収縮

CellArray-Heart™上の培養17日目の心筋細胞の運動をライブセルイメージングシステムを使用して解析した結果、CellArray-Heart™では顕著な一方向(180°と0°)への動きが検出されました。これは、心筋細胞が一定方向に収縮していることを示しており、収縮方向はストライプの方向と一致しました。 一方、平面の培養基材では、全方向(360°)への動きが検出され、心筋細胞はランダムな方向の収縮を示しました。

心筋細胞はストライプ方向に沿って一方向に収縮

運動機能の活性化　― 一定の方向に大きく拍動 ―

動画は培養14日目の心筋細胞の拍動の様子を示しました。CellArray-Heart™上で培養した心筋細胞は一定の方向に収縮し、平坦基材上で培養した心筋細胞と比較して拍動数が多く、運動機能の活性化が確認されました。

「CellArray-Heart™」製品ラインアップ

35mmディッシュと96ウェルプレート
使用用途に合わせて2種類のタイプを用意しております。

CellArray-Heart™ 35mmディッシュ

CellArray-Heart™ 35mmディッシュ UpCell^®加工

再生医療の研究試験用
短期培養で成熟した直径35mmサイズの配向性心筋シートを作成できます。
表面に、温度応答性ポリマーなどの細胞の剥離を可能にする素材をコーティングする事で、細胞シートを取り外し、再生医療研究に使用する事が可能です。
※当商品単体では培養細胞の解析が中心になります。細胞剥離ができる商品をご要望の際はUpCell^®加工タイプをご検討ください。

ディッシュ本体、蓋 ： ポリスチレン製
寸法 ： 本体(外寸) φ 39 mm / 高さ 13 mm
細胞培養表面処理済、個別包装、滅菌済み

配向した細胞シートを基材から剥がせるタイプ（UpCell^®加工）が新登場！

UpCell^®加工を施したCellArray-Heart™はトリプシン等、細胞にダメージを与えることなく、温度を20～25℃にすることで、細胞シートとして回収できます。

✓ヒトiPS 細胞由来やマウス筋芽細胞で、配向した細胞シートが剥離できました。
✓ 剥離後の細胞シートは、ストライプ方向に伸長した細胞が縮むことにより、
 楕円形を呈しました。

CellArray-Heart™ 96ウェルプレート

薬品開発の研究試験用
ヒトiPS細胞由来心筋細胞の成熟化したフェノタイプで心毒性評価が可能です。
イメージングに好適なブラックウェル、底面フィルムは透明性に優れ、自家蛍光の少ない材料を使用しています。

ウェルプレート本体 ： ポリスチレン製
底フィルム ： COP(環状オレフィン樹脂)製
寸法 ： 本体(外寸) 縦 85.5 mm / 横 128 mm / 厚さ 14.4 mm 、ANSI/SBS準拠
細胞培養表面処理済、個別包装、滅菌済み

・心筋細胞、筋芽細胞、線維芽細胞で確認済みですが、細胞の種類、培養条件によっては配向に適さない場合もあります。
・ディッシュの培養面に光学干渉色（虹色模様）が観察されますが、微細構造による構造色であり、細胞培養・顕微鏡観察に影響はありません。顕微鏡下では底面構造のストライプ模様が観察されます。
・本製品は、研究・開発用途に限定して販売しております。研究・開発用途以外の目的でご使用された場合の安全性については保証できませんので、予めご了承願います。
・本製品はディスポーザブルタイプです。繰り返しのご使用はできません。
・本製品は、予告なく仕様変更、価格変更する場合があります。予めご了承ください。