再生医療において三次元培養による細胞塊(スフェロイド、胚様体)の有用性が注目されています。細胞塊三次元培養・分化誘導マイクロプレート「TASCL」(タスクル)は、東京大学の微細加工技術と表面処理技術をもとに開発されました。特徴は、ほぼ均質な形状・大きさの細胞塊を一度に大量培養可能なことと、約1ヵ月の長期培養により分化誘導を図ることが可能なことです。使い方は簡単で、TASCL上で細胞の顕微鏡観察も可能です。器材や培地・試薬のトータルコストも安く済みます。
※本品は試験研究用として販売しております。
価格表
詳細 | メーカー | 製品番号 | 製品名 | 容量 | 価格 | 在庫情報 | 保存温度 | 法規制 | ||||||||||||||||||||||
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シムスバイオ | TASCL1000 | 細胞塊(三次元スフェロイド)大量培養・分化誘導マイクロプレート「TASCL」 1000ウェル | 1PK | ¥23,000 | 問合せ | - | - | |||||||||||||||||||||||
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シムスバイオ | TASCL600 | 細胞塊(三次元スフェロイド)大量培養・分化誘導マイクロプレート「TASCL」 600ウェル | 1PK | ¥23,000 | 問合せ | - | - | |||||||||||||||||||||||
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規格・仕様
TASCL 1000 ウェル | TASCL 600 ウェル | |
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セット内容 | 6ウェルプレート x1 カルチャーインサート x6 TASCL 1000ウェル x6 | 6ウェルプレート x1 カルチャーインサート x6 TASCL 600ウェル x6 |
ウェル数 | 1020 | 621 |
ウェル上部 | 500 µm x 500 µm | 650 µm x 650 µm |
ウェル底部 | 250 µm x 250 µm | 400 µm x 400 µm |
ウェル高さ | 500 µm | 500 µm |
1ウェル当たりの培養細胞数の目安 | 500 ~ 3,000個 | 2,000 ~ 10,000個 |
細胞塊形成のタイムラプス動画
以下は標準的なプロトコールですが、アプリケーションに応じて、調整してください。
1. 細胞懸濁液の調製
【TASCL600の場合】
マイクロウェル1個当たりの細胞数 × 621 の細胞を培地0.5mlに懸濁します。
【TASCL1000の場合】
マイクロウェル1個当たりの細胞数 × 1020 の細胞を培地0.5mlに懸濁します。
2. TASCLのリンス
培地(あるいは緩衝液)0.5ml程度をTASCLの上に滴下し、各マイクロウェル内に行き渡らせた後、吸引除去します。
3. 6穴プレートへの培地添加
カルチャ―インサートの外側(6穴プレート上)に培地3.0mlを加えます。
6穴プレート全体に培地が浸透するよう、前後左右にゆすって広げてください。
4. 細胞播種
1で調製した細胞懸濁液をTASCLのメッシュ上に滴下し、細胞がメッシュの底に沈降するまで待ちます。
5. 培地量の調整
TASCLの表面が乾かないように、TASCL内の液面とカルチャーインサートの外側(6穴プレート上)の液面が同じになるように、TASCL内とカルチャーインサートの外側に培地を追加します。
※外側の培地の液面が、TASCL上の培地の液面と同じ高さ以上になるよう留意します。
液面が低いと、長時間培養時には、TASCL上の培地がサイホン効果により流出する恐れがあります。
6. 培地交換
通常は、カルチャ―インサートの外側の培地のみ全量交換します。
※TASCL上の培地は、カルチャ―インサートの多孔質膜を介して、徐々に新しい培地と交換されます。
7. 細胞塊回収
- 十分量の培地をTASCL上に加えます。
- ピペッティングにより、細胞塊を浮遊させ、培地と共に回収します。
- ピペッティングで回収できない場合は、以下の方法により細胞塊を回収します。
①細胞塊がTASCL側に接着している場合
TASCLをピンセット等で把持して、インサートから剥がし、緩衝液などが入った6ウェルプレートや遠沈管の中でピペットの水流により落とします。
②細胞塊がカルチャ―インサートの表面に接着している場合
TASCLをピンセット等で把持してカルチャ―インサートから剥がし、カルチャ―インサート表面の細胞塊をスクレーパーなどでこすり落とします。
- ほぼ均一な細胞塊を一度に大量培養できる
→TASCL600ウェルでは約3600個、TASCL1000ウェルでは約6000個 - 細胞塊の状態を長く良好に保つことができる
→底面が貫通、ガスや培地が循環するため - 同一器材のまま分化誘導ができる
→ガスや培地が循環することで1ヵ月間もの長期培養ができるため - トータルコストを削減できる
→高密度のウェル構造で培地・試薬を節約 - 開けてすぐに使える
→タンパク質防付着処理済、滅菌済み - 簡単に使える
→播種は細胞懸濁液を上から播くだけ(遠心分離不要)
→培地交換の際に細胞塊に触れないため培地交換が容易 - 観察が容易にできる
→TASCLに載せたまま細胞の顕微鏡観察も可能 - 共培養の細胞塊も培養しやすい
→2,3種類の細胞を共培養した細胞塊も形成しやすい
再生医療において、細胞を細胞塊(三次元スフェロイド)として用いることには様々な有用性があります。
ところが、従来は細胞塊の大量培養は容易ではありませんでした。
細胞塊を培養する従来の方法としては、ハンギングドロップ法や細胞非接着性培養器材を用いる方法がありますが、方法が複雑、培地交換が難しい、細胞クラスターが不均質になる、などの問題があり、従来は均質サイズ・形状の細胞塊(スフェロイド)を大量に三次元培養することは困難でした。
また、細胞塊を培養するための様々なマイクロプレートや培養器材がありますが、細胞塊の形状・大きさがバラバラだったり、扱いにくかったりする問題があります。また、同じマイクロプレート上では分化誘導まで図ることができません。
この問題解決のために開発された細胞塊(スフェロイド)大量培養(三次元培養)・分化誘導マイクロプレートが、TASCLです。上から細胞を含む懸濁液を振りかけるだけで、ほぼ均質な大きさ・形状の細胞クラスターを1つで1000個または600個(6ウェルプレートでは6000個または3600個)程度を三次元培養・分化誘導することができます。
TASCLではほぼ均質な大きさの球状の細胞塊(スフェロイド)を一度に3600個~6000個ほど三次元培養することができます。
他のマイクロウェルと比較した実験でもこの点が証明されています。
TASCLはカルチャーインサートに載った状態でパッケージされています。
TASCLの底は穴が貫通しており、カルチャーインサート上で培養することで、ガス・培地が拡散され、細胞クラスターの生存率が向上します。
そのため1ヵ月程度の長期培養をすることができ、分化誘導も図ることができます。
TASCLで培養・分化誘導した細胞塊を、細胞塊移植治療やその研究に用いることが想定されます。
また、薬剤等の試験や、治療法の研究に用いることが想定されます。
細胞塊移植治療としては、通常の細胞移植に比べてサイトカインや成長因子の産生が多くなり、定着率が高くなると考えられます。
軟骨・半月板、皮膚、目・耳、脳脊髄神経、心臓、肝臓、膵島などの組織で細胞塊移植治療の可能性があります。
- 創薬・化粧品開発等における動物実験の代替としては、薬剤試験では、細胞に比べて細胞塊の方がより生体に近い反応が得られます。
細胞塊は動物実験の代替策として有効です。 - 腫瘍組織モデルとしては、腫瘍組織の三次元スフェロイドが治療法の研究に用いられています。